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(一社)日本医療機器テクノロジー協会について

2025年度事業計画

Ⅰ.総 論

日米の政権交代による国内外の社会環境の変化が予想される中、ウクライナやイスラエル・パレスチナの紛争は未だ終結に至らず、地政学的緊張が続いている。これらによる経済への不透明感、また、少子高齢化の進行といった課題が、医療機器や医療を取り巻く状況に大きな影響をもたらしている。部素材価格が高止まったままであるところに加えて、物流コストの上昇は企業の収益を圧迫する要因となっており、医療機器産業の使命の一つである安定供給の確保は厳しい状況に置かれている。MTJAPANとして、引き続き会員企業の協力のもと、診療報酬改定を含む医療保険制度に関する行政への要請を実施する。

一方、デジタル医療技術の進展やサスティナブルな医療提供への期待が医療機器産業に向けられている。成長産業としての期待に応えるべく、グローバルな市場を創造するためにも、これまでの事業を見直す機会でもある。産業戦略、グローバル展開では、新たな視点での検討も必要となってきている。

また、EO排出規制やPFAS等の環境課題や競争法コンプライアンス等の企業倫理課題に関しては、今や組織の基盤となるものであり、MTJAPANとしても引き続き注力する。医療機器規制に関しては、「医療機器規制と審査の最適化のための協働計画2024」を通じて、各種課題の改善に継続して取り組んでいく。

MTJAPANの事業活動を支えるうえで人財の確保・育成は重要課題である。特に国内外における標準・規格(ISO、JIS等)の開発や維持管理を担う人財の確保・育成は急務である。

このような課題認識の下、2025年度は、2024年1月に公表した中期ビジョンを基軸に、引き続き以下の3つを重要テーマに据え、各々の重点施策に取り組むこととする。

【重要テーマ】
  1. 安心・安全・信頼の確保
  2. イノベーションによるグローバルな市場創造に向けた取り組み
  3. 組織力・人財育成の強化

Ⅱ.2025年度重点施策と主要課題

  1. イノベーション創出に向けた産業基盤の強化
    • 政策動向の分析と政策提言への取り組み
    • 医療機器イノベーション創出の機会提供への取り組み
    • 研究開発技術者及びISOやJIS等規格の管理・開発エキスパート育成への取り組み
    • 部材供給円滑化への取り組み
  2. 医療機器の特性を踏まえた規制と審査の最適化への取り組み
    • 薬機法改正に向けた取り組み
    • 医療機器開発プロセスと規制の最適化の検討
    • 医療機器の特性に合わせた承認認証審査制度の検討
    • デジタル技術を活用した手続きの効率化の検討
  3. 治験・臨床研究の円滑化への取り組み
    • 臨床研究法及び倫理指針の改正への取り組み
    • 治験効率化への取り組み
    • 被験者保護及び治験等の検討
    • リアルワールドエビデンスの利活用の検討
  4. 産業基盤の強化・成長に向けた医療保険制度整備への取り組み
    • 医療保険制度のあり方に関する調査検討
    • イノベーション評価のあり方に関する検討
    • 安定供給の維持に向けた制度面からの検討
    • 2026年度診療報酬改定における業界提案施策のためのエビデンス作成に関する検討
  5. 国際展開の推進
    • 海外展開支援促進策の検討
    • 国際薬事規制・業界動向の把握と周知への取り組み
    • 法規制の国際整合への取り組み
    • 国際展開戦略策定及び提言への取り組み
  6. 医療安全への取り組み
    • 相互接続防止コネクタの円滑な市場導入への取り組み
    • 保守管理等医療機器の定期点検、安全確保に関するユーザーへの周知
    • サイバーセキュリティへの取り組み
  7. コンプライアンスの徹底
    • 企業倫理・コンプライアンスに関する啓発活動の推進
    • プロモーションコード、公正競争規約、適正広告ガイド等の理解促進への取り組み
    • 競争法コンプライアンス規程の周知と遵守の徹底
    • 透明性ガイドラインの意義を踏まえた情報公開の推進
  8. 流通における効率化への取り組み
    • 「物流の適正化・生産性向上に向けた自主行動計画」への対応
    • EDI化促進への対応
  9. 情報発信の強化
    • 国民に対する医療機器への理解度向上への取り組み
    • 業界団体活動の対外発信力の強化
    • 会員向け提供情報の質向上に向けた継続的な取り組み
    • MTJAPAN医療機器統計資料の編纂と対外活用の推進
  10. 環境規制への取り組み
    • EO大気排出抑制対策への取り組み
    • 原材料、化学物質及び環境等に関する法規制の周知
    • 医療機器のライフサイクルに纏わる環境対策への取り組み
  11. 災害発生時等の安定供給懸念解消への取り組み
    • 安定供給確保のための情報収集や発信を担うための防災訓練の実施
    • 製造所・流通拠点(サプライチェーン)マップの維持
    • 被災状況及び医療への影響度を迅速に把握する体制の整備
    • 代替品確保支援への取り組み
  12. MTJAPANのさらなる活性化に向けた取り組み
    • 次世代人財育成策の実施
    • 業界組織率の向上をめざした新規会員の獲得
    • 中期ビジョンの浸透
    • 各委員会の取り組みの推進

以上

2025年度部会事業計画概要

  1. 第1ディスポ部会

    MTJAPAN理事会報告やJIS改正進捗状況の他、国際規格委員会、法制委員会、企業倫理委員会などの各委員会からの情報を定期的に開催する部会にて部会員に提供するとともに、メールにて事務局、各委員会からの情報をタイムリーに提供する。

  2. 第2ディスポ部会

    競争法コンプライアンス規定を遵守し、理事会報告、法制委員会報告、公取協の活動報告及び各委員会情報の部会内共有化を図って行く。また、部会員の意見・要望を収集し、各委員会等へ提案して行く。より一層、部会員への適切かつタイムリーな情報の共有化に努め部会活動の活性化を図る。

  3. 人工腎臓部会

    業界を取り巻くさまざまな環境変化に適確且つ迅速に対応するため、関連学会等ステークホルダーとより一層の連携強化に取り組む。また、部会員への適宜・適切な情報提供と共有化等により部会活動の更なる活発化活性化に努める。

  4. 人工心肺部会

    関連する学会、部会との連携強化を図り、環境変化への対応を行う。部会企業への適切な情報提供と情報収集を迅速に行い部活動の活性化を図る。

  5. 血液浄化部会

    関連する部会・委員会、学会等との連携を行いながら、当部会の関連課題に対する活動を実施する。医薬品医療機器法や安全対策、災害対策、安定供給、診療報酬、企業倫理などの関連情報を迅速かつ適切に共有しながら対応を行い、医療機器業界の発展に向けた健全で適切な活動を推進する。

  6. 第1カテーテル部会

    前年度に続きMTJAPAN理事会、事務局、各委員会からの情報をメール・部会でタイムリーに提供する。特に保険制度、法制、ISO80369、環境、コンプライアンスに重きを置く。

  7. 第2カテーテル部会

    部会は定期開催することで、部会員に対して主に理事会からの情報を提供する。また、部会からの派遣等により委員会に所属する委員から、当部会に関連する情報を資料と共に提供する。

    2023年10月当部会所属の企業から、更には2024年3月当協会の企業から贈収賄事件が起きたことを重く受け止め、引き続きコンプライアンスの徹底の重要性を周知していく。

    また2026年度診療報酬改定に向け、医療保健委員会と密に連携を取り、部会員企業に向けた情報提供を行っていく必要がある。

    併せて災害発生時等の製品の安定供給につき、改めて部会内でも懸念の解消に努め、必要に応じて支援を行政に要求していく。

  8. 総合インプラント部会

    Webによる定例報告会を開催(2ヶ月毎)し、会員企業・対象製品に関連する薬事規制、保険、コンプライアンス関連についての情報共有を実施する。

  9. 整形インプラント部会

    イノベーティブな医療の実現とサスティナブルな医療機器の安定供給モデルの確立、そしてコンプライアンス強化による医療者・国民からの信頼担保、これらに貢献すべく、本年も5つの小委員会制でアジリティを持たせた活動を展開するとともに、四半期ごとの幹事会・定例会を開催し、タイムリーな情報共有と課題に対する取り組みの進捗確認を実施する。特に、本年は2026年度診療報酬改定に向けた対応を、学会とのコミュニケーションも強化しながら確実に実施する。また、2021年に立ち上げたコンプライアンス・ネットワーク会議を今年も継続的に行い、参加企業をさらに増やし、整形外科業界でのコンプライアンス強化を図っていく。さらに、次世代人財育成と部会活動維持を両立するため、部会幹事メンバーの任期や後任選定に関する内規の策定も予定している。

  10. 再生医療部会

    行政からの通知について部会内で情報共有を行うとともに、意見募集等依頼事項や、説明会の開催等に対して随時対応する。再生医療等製品の諸課題に関する検討会議を通して課題の共有と業界意見の取りまとめを行う。また、公的な活動へ参画し、意見提出や当該活動に関し、部会内への情報共有を行う。さらに、法制委員会での提供、議論された内容で、再生医療にも関連するものと考えられる情報については共有を行う。

  11. 創傷被覆材部会

    診療報酬改定に向けた関連学会との協業及びエビデンスの構築について部会参加各社と検討を続けるとともに、医療保険制度のあり方についても議論を重ねていきたい。さらに今後の創傷被覆材市場活性化のため参加企業協力のもと、今年度も市場調査の実施のための計画を進める予定。コンプライアンスの徹底を促進するためにも引き続き、参加企業を対象とした研修の実施を検討している。

  12. 在宅医療機器部会

    医療行政において「在宅医療の充実」は引続き重点課題とされている。当部会は、MTJAPANの中で在宅医療関連の事業を行っている企業が集まっている唯一の部会であり、自らの立場・役割を十分認識し、在宅療養を行っている患者さんの安心と安全に十分配慮しながら、更なる質の向上と安全確保に向けて諸課題に積極的に取り組んでいく活動を行う。

    会員各社が携わっている在宅医療は、在宅酸素療法、在宅自己腹膜還流療法、在宅中心静脈栄養法など多岐に亘っていて拡大する方向にあり、取扱っている機器・材料類や対象となる患者様の生活実態などが異なるため、対応が一様でない部分もあるが、必要に応じて分科会新設も行い、行政の理解を深めることも含め、幅広い検討・協議をすすめていく。

以上

2025年度委員会事業計画概要

  1. 産業戦略委員会

    MTJAPAN関連産業発展に向けた産業戦略を担う委員会として、医療機器産業振興に関わる政策の情報共有及び意見交換を行い、医機連と連携しての政策提言、産業成長のための基盤整備等を実施することで、会員企業ならびに医療機器産業全体に貢献する。

  2. 医療保険委員会

    2026年度診療報酬改定に向けた業界意見を取りまとめ、定期会合、中医協での意見陳述へつなぐ活動とする。特に安定供給の確保に向けた状況調査(案:不採算要望の実態、逆ザヤの実態)を実施し、中医協での議論に耐えうるエビデンスづくりと理論武装を行う。

    また、厚労省産情課や関係団体とは、意見交換などを通じ、引き続き連携を密に取り、一枚岩で改定に臨むこととする。

    会員向け説明会・講習会による個社のレベルアップならびに、有識者との勉強会により委員会のレベルアップを図る。

  3. 国際委員会

    会員企業の国際展開を支援するため、海外展示会やシンポジウム等に積極的に参加して海外の医療産業動向、規制情報や国際展開を推進するための施策等について調査・研究を行い、会員に向けて情報発信する。また、医機連活動を通じて、国際調和や規制緩和などの課題解決に取り組む。

  4. 技術委員会

    2024年度と同様に、会員企業における技術者の育成及びレベルアップ支援を目的としてセミナーを開催、また各種情報を会員向けに提供する。医機連活動も同様で、技術委員会、EMC分科会、知的財産分科会に委員を派遣し活動を推進する。AMED「開発ガイダンス見直し事業」は2年目を迎えるが、MTJAPANでの受入体制構築、ルール作りなど整形インプラント部会等と連携し完了する。

  5. 流通委員会

    物流2024年問題に対する「改正物流効率化法」施行に対して医療機器物流への影響調査、関連法案に関する情報について会員へ発信し共有、また業界としての対応策、今後の取り組みについて検討する。

    医療機器のUDI利活用拡大(容器、個包装及びデータベース登録義務化)への対応、EDI化促進、DX化等の医療機器流通特有の課題への対応について関係団体との情報共有、連携しながら取り組む。

  6. 環境委員会

    EO排出抑制に関する自主管理計画の推進を図る。会員企業における自主管理計画実施状況の調査を行い、MTJAPAN自主管理計画の進捗状況を評価する。行政当局とのパイプを維持し、必要な活動を行う。

    原材料、化学物質及び環境に関する国内外の規制について情報を収集し、共有化する。

    環境委員会セミナーを企画し、原材料、化学物質及び環境に関わる情報を発信していく。

    医療機器のライフサイクルに纏わる環境対策について諸外国を含め情報を収集し、発信していく。

  7. 法制委員会

    医機連の活動と連携して「医療機器規制と審査の最適化のための協働計画2024」の課題等について情報共有、協議に取り組む。今年度公布される薬機法改正後の対応として、医療機器開発プロセスと規制の最適化の検討を進めるとともに、医療機器の特性に合わせた承認認証審査制度の検討に取組む。また、デジタル技術を活用した手続きの効率化の検討を進める。会員へのタイムリーな周知のため連絡会や報告会を継続実施する。法制委員会の運営を担う人財育成にも取組む。

  8. 安全性情報委員会

    前年度同様、医機連PMS委員会及び活動WGへの参画及び報告を受けMTJAPANとしての意見・要望を検討する委員会を主体として推進。その他MTJAPAN主催:高度管理医療機器販売業・賃貸業・修理業の営業管理者・責任技術者継続的研修への協力及び「安全管理に係る説明会」を開催。

  9. QMS委員会

    前年度に引き続き、医機連QMS委員会と連動し、医薬品医療機器等法への対応、ISO13485の改定及びMDSAPの利用・対応を中心に最新動向の把握・周知を図るとともに、製造販売業者/製造業者としてのQMS運用レベルを向上させる施策を推進する。

  10. 国際規格委員会

    ・ISO/TC(76,84,150,194,198)国際会議への専門委員派遣及びISO規格制定、改正の推進
      (TC76国際会議を東京で開催予定:10月)

    ・ISO/TC(76,84,150,194)国内委員会の開催、運営

    ・JIS小委員会、JIS原案作成委員会の開催及びJIS規格制定、改正の推進

    ・国際規格委員会(幹事会)の開催

    ・国際規格審議団体分科会(医機連主催)への参加

  11. 臨床評価委員会

    医機連・臨床評価委員会と連携し、医療機器の治験・臨床研究等の臨床評価全般について、法規制及び国際整合化に向けての課題抽出と解決に向けた活動を行う。また、会員企業や臨床試験関係者に対しては、関連通知や成果物の啓蒙活動に取り組む。

  12. 広報・教育委員会

    医療機器の価値ならびにMTJAPANの取り組みを社会に伝える。

    広報及び教育活動を充実させ、MTJAPAN全体で組織力強化、情報の共有化を図る。

  13. 企業倫理委員会

    透明性ガイドラインや適正広告ガイド等の周知活動に加え、関連法令や業界の自主ルールの理解促進・遵守徹底に向けた啓発活動を行うことにより、会員企業が高い倫理感を持ち、コンプライアンスを基盤とする事業活動を実現し、業界に対する社会からの信頼性確保及び向上に寄与することを引き続き継続する。

    上記活動においては、医機連や公取協支部と連携を密にする。

  14. 統計委員会

    2025年度版MTJAPAN医療機器統計資料の発行を目指す。

    引き続き統計データの精度の維持向上を図るとともに、より有用で活用度の高い資料とするべく、継続して編集内容の見直しや資料の有効利用に関する検討も進める。

  15. 機器・メンテ委員会

    医療機器に関連する基準・規格や基盤技術から保守点検・修理について調査・検討を行い、品質・安全確保に向けた施策の立案・提言について、医療機器を保有している各部会と横断的な連携をはかり、課題検討や情報共有を行う。また、医機連技術委員会EMC分科会や販売・保守委員会へ委員を派遣し、医機連とも連携しながら活動を行う。

    その他、医療機関における保守管理・サイバーセキュリティ対応等の啓発活動を継続する。

以上